ORGANIZATIONAL EPISTEMOLOGY

【ORGANIZATIONAL EPISTEMOLOGY】

文献情報

書名:『オーガニゼーショナル・エピステモロジー』

著者:グオルグ・フォン・クロー / ヨハン・ルース

訳者:高橋量一 / 松本久良

出版社:文眞堂 出版年:2010年5月1日

<第1章> 組織知という概念について

本書の目的「組織知の理解を促進する観察スキームを提示すること」について述べ、組織知がいかに扱いにくいものかを紹介している。

詳しく読む


●本書の目的:組織知についての理解を促進する観察スキームを提示すること

●本書の試み

  1. 知の特性を記述できる言葉を編み出す。
  2. 組織知を生成する、何度も繰り返される厄介で複雑なプロセスを記述できる言葉を編み出す。

【組織知】

●「組織知」という概念を提唱すること自体極めて複雑。

●組織知というものを記述できるようにしてくれる概念を展開することが重要。


閉じる

<第2章> これまでのオーガニゼーショナル・エピステモロジー

コグニティビストとコネクショニストの対比によって、エピステモロジーについての簡単な議論と、そのマネジメントおよび組織研究への適用方法を紹介している。

詳しく読む


【哲学の中のエピステモロジー】

●これまでのエピステモロジー:知識の獲得方法と解釈方法を両方扱った哲学的な方法論。

●ロジック:命題を理解することと、論証に際して命題を利用すること。

●新たなオーガニゼーショナル・エピステモロジー:組織研究の基本特性について理解するとともに、「組織の存在論」と「組織の宇宙論」についても扱う方法論。

●エピステモロジー(本書の定義):知識、世界、そして両者の関係についての理論なりアイディアの集合体。

●エピステモロジーの主要な問題:どのようなプロセスを経て個人や社会的実体は世界について知るようになるのか。

●知識について語られることはどんなものでもすべて、語る人の影響を少なからず受けている。

【オーガニゼーショナル・エピステモロジー】

●オーガニゼーショナル・エピステモロジーについての解釈

  1. どのように、なぜ組織の中の個人は知るようになるのか。
  2. どのように、なぜ社会的実体としての組織は知ることになるのか。
  3. 何が、個人および組織の知識にとって重要であるか。
  4. 何が、組織知の展開にとっての障害となるか。

●知識の内容の定義とは相対的なものである。

例)知識の欠如を感じる=組織内の他の人が、自分が知らない知識を知っていると認識する。

●本書の企画は、知識の内容というものを超越したものであり、なぜどのようにというもっと根源的な問題を提出することであるが、内容についても加味しないと議論できないことを受け入れる。

【コグニティビストのエピステモロジー】

●コグニティビスト(=認知主義者)のエピステモロジーの中心にある考え方:心には様々な方法で現実を表現する能力がある。

例)テーブルの上にあるリンゴに目をやると、心の中でこのリンゴを表象することになる。リンゴについての「イメージ」や「概念」を構築している。

●コグニティビストのエピステモロジーにおける学習とは、新しい経験をつむことによって、世界についての表象を改善することである。

●コグニティビストのエピステモロジーは表象主義という考え方を具体的な現象(物体、事象、状態)に限定しない。表象がうまく生じるには十分な記憶が不可欠である。

●コグニティビストが保持しなければならない仮説

  1. 人間は外界からの情報に対して透明・無垢なスタンスである:感覚によって情報を取り込み、物理的特徴によって物体をカテゴリーに分類する。
  2. 人間の脳を論理と演繹をつかさどる「機械」とみなす:脳は推論のプロセスで論理を使用するとともに、脳はその物理的構造の中で論理原則を具体化する。
  3. 論理能力の他に、人間の脳は、確からしさの判断とヒューリスティックの能力を有する。

●論理とは、観察される現象に関してその真実を明らかにせしめる人間の能力、つまり人間が知識を獲得する媒体である。

●コグニティビストの仮定:人間の脳は、論理能力の他に、確からしさの判断とヒューリスティックの能力を有する。

●組織の研究は、論理能力と確からしさの判断というコグニティビストの仮定を、3通りのやり方で取り込んでいる。

1.経営に関する知識を論理地図作成の要領で表象できるものとみなすこと

●マネジメントとは論理能力そのものであり、研究者の任務はマネジャーが用いるそうした論理を明らかにすることである。

2.組織を問題探索者および問題解決者とみなすこと

●現在の表象を変えたりそれに取って変わるという意味での学習は、重要なテーマであるが難しい問題である。

3.組織を戦略計画や予測ツールとみなすこと

●組織は以前に遭遇したことのある事象と組織にとっての新しい事象とを区別する必要があり、それぞれ別々にアプローチする必要がある。

●同じ事象が繰り返されにくい不確実な環境下で、組織が存続し成長するために重要な、経営者の3つの異なるタイプのスキル。

  1. 不確実な将来像を予測するためのスキル
  2. コロコロ変わる環境下でそれに適した行為をとれるスキル
  3. 計画を効率的かつ迅速に実施するスキル

●将来が不確実な場合、将来の状態についての確からしさの判断は、実際の経営ではほとんど価値がない。

理由:人間の推論は、単純なルールに従ったり、認知的簡素化やヒューリスティックを必要としがちなため。

●将来像とその実現のためにとるべき行為の代替案を表象し、その結果選ばれた行為を実施できるよう、組織はまさにコンピュータのように精密に「プログラム化」される必要がある。

●真理とは知識と観察可能な事実とが一致することである。

【コネクショニストのエピステモロジー】

●コグニティビストに対する、コネクショニスト(=統合主義者)の批判

  1. 複数のルールが都合の良い順番で適用されている。
  2. 情報処理が限定的であり、ルールが破られたりシンボルが消失したりしたら、それはシステム全体の有効性に重大な意味を持つことになる。

●批判の根拠:生物学からかけ離れている。

事例)小さな昆虫が凄く速く行なう動作のほとんどは、各パーツが逐次的にシミュレーションされた場合に物理的に可能となる速さ以上に速く行われている。

●人の学習に関してコグニティビストとコネクショニストのエピステモロジーとでは理解の仕方が異なっている。

パースペクティブ

コグニティビスト

コネクショニスト

理解の仕方

学習を「外的世界と一致するように、できる限り正確に表象を確定すること」と捉える

脳のルールと各コンポーネント間の結合の歴史とが現在の結合のあり方に影響を及ぼすとみなす

相違点

ある対象物について

無数の表象が存在する

人間の精神構造は

精通や経験を必要とする

●認知能力は、それが論理能力であれ確からしさの判断であれ、要求されたタスクあるいは前もって計画されたタスクを解決することを目的としている。

●コネクショニストのエピステモロジーが組織に対して持つ意義には2つの仮定がある。

  1. 創発的性向:環境からの新しい情報は言うまでもないが、ネットワークの過去の状態も組織の現在の知識に影響している。
  2. 歴史的性向:知識を歴史依存的なものととらえる。

●知識は個々の組織メンバーの脳の中にというだけではなく、十分に留意された相互関連性というルールを通じて、メンバー間のつながりの中にも知識は生まれ存在するものである。

●表象を行ったりそれを再構築したりする際に必要な準拠点は、外部に存在している。


閉じる

<第3章> オートポイエーシス・システム

オートポイエーシスの基本的能力4つ(自律性・オープンであると同時にクローズド・自己言及的・観察可能性)について解説している。

詳しく読む


 

【レンズ】

●本章の目的:考える材料(food for thought)を提供すること。

●オートポイエーシス(ギリシャ語):自己産出

●オートポイエーシスは、生命を理解するという、人類が提起した最も根本的な問いの一つであり、一般的に自然科学(とりわけ分子生物学)における還元主義的な趨勢に配する反動である。

【オートポイエーシス・システムの特徴】

●ユニティー:背景から明確に区別されうるコンポーネント間の「相互関係」を構築しているもの。

●ユニティーを裏打ちしている条件(弁別可能性)によって、現象が決定される。

●オートポイエーシス・システムは、ユニットである(システムそのものによってユニットであるように見える)。

理由:その自己産出プロセスによって境界が明らかになるから。

●システムを特徴づけているのは、コンポーネントそのものではなく、コンポーネント間の相互関係のセットである。

●オートポイエーシス・システムは、時間の経過と共にそのコンポーネントを変化させるが、構造が変化しても組織が維持されているならば、そのシステムはアイデンティティを保っている。

●オートポイエーシス・システムの定義(Maturana, Varela, Uribe)

  1. 同一のコンポーネント産出ネットワークに繰り返し参与する
  2. それによって産出ネットワークは、コンポーネントが属する空間におけるユニティーとして認識される

●オートポイエーシス・システムの4つの基本的能力:自律性・オープンであると同時にクローズド・自己言及的・観察可能性。

自律性

●自律性:自己制御・自己統制(すなわちアイデンティティーを維持していること)を意味する。

●オートポイエーシス・システムがシステムとして機能するためのルールは、システム組織と、システム自身を再産出する方法の中に見出される。

●自律的なシステムは、コンピュータのように、インプット・アウトプット関係を通じて環境と結びついているシステムとははっきり弁別される。

●オートポイエーシスと自己組織化は同義ではない:自己組織化システムにおける自律性の開発は、様々なコンポーネントのインテグレート・プロセスであると同時に、システムの境界で様々なコンポーネントを拒絶するプロセスでもある。

オープンであると同時にクローズド

●オートポイエーシス・システムは、環境で起こった出来事(攪乱)によって刺激されたり妨害されたりするが、攪乱に至るエネルギーを管理しない。

●攪乱は単にシステムそのものに内在するプロセスを刺激したに過ぎず、最終的結果がオートポイエーシス・システムによって決定させることはあり得ない。

自己言及

●自己言及:システムによって蓄積されたシステム自身に関する知が、当該システムの構造と作動に影響を及ぼすこと。

●オートポイエーシス・システムは、ある特定の時空連合体に関して自己言及的であるばかりでなく、システム自身の進化に関しても自己言及的であるため、それ自体の作動を通して首尾一貫性を達成する。

●われわれが知る何かは、われわれは既に知っていた何かの影響を受けており、われわれが知るであろう何かは、われわれが今現在知っている何かに依存している。

観察可能性

●オートポイエーシス的なシステムは、そのシステムを除けば、いかなる物も人も直接アクセスすることはできないが、観察者の立場からのみ観察可能である。

●観察はそれ自体、オートポイエーシス・システムの作動である。

●観察者が内的構造に注意を集中する:環境を背景として眺め、システムの特性はコンポーネント間の相互作用から浮かび上がってくる。

●環境に注意を集中する:環境との特定の相互作用を伴うシンプルな実態としてシステムを扱う。

【適用上の注釈】

●生物学的ルーツを通じて、オートポイエーシス・システム理論はプロセスと関係にフォーカスしてきた。(関係:コンポーネントを通じて実現されるプロセスと、システムのコンポーネントそれ自体の特性とは関わりなく実現されるプロセスの間の関係)

●人間のようなすべてのメタ細胞は、自身を構成している連結された細胞を通じて自分自身を再産出している。すべてのメタ細胞はオートポイエーシス・システムであるため、人間はみなオートポイエーシス・システムである。


閉じる

<第4章> 組織知 ― 個人の組織知(と社会の組織知)―

組織知に関して触れ、組織とはオートポイエーシス的な存在であることに加えて、オートポイエーシスの階層レベルの問題を考慮にいれるべきだと主張している。

詳しく読む



【組織の知】
●個人レベルの組織知とは、「個人の中にある」組織知のことである。
●世界は所与のものであり、そうした世界を可能な限り精確に表象するのが認知システムの役目である。
●オートポイエーシス理論とは、人の知と世界との間の関係を説明する、これまでのものとは全く違う新しい概念である。

【知の具現化】
●知識とは純粋無垢な抽象物ではなく具現化されたものである
●オートポイエーシス理論をベースにした知識論:「知られることになるものはすべて、すでに誰かに知られている」
●オートポイエーシス理論は、過去の経験がこれから得られる新しい経験に影響を与えることになる。
●知はわれわれが世界で知覚し、行為し、活動することを可能にする。そして、われわれが行為し、知覚し、活動するにつれて、世界というものが、われわれの行為と観察の結果として出来するのである。
●立ち現れる「世界」とは、過去の経験によって規定される主観的なものである。
●連結構造の独自の歴史と自律性の関連性:知は他の人にそのまま移転できる代物ではない。
理由:知とは各人各様の連結構造の中で形成されるので、展開する知もまた独自のものになるから。

●ある特定のスキルを磨くということは、肉体と精神があいまって活動のパターンを調整し完結するような、極めてプライベートな経験である。
●ある人の知とは、連結構造の歴史を通じてタスクをじかに経験したことの結果生じるものである。
●観察された知とは、具現化された知というコンセプトに関して密接に結びついている。

【知、弁別、価値、そして自己言及の基本】

●心は、認知システムの構造を語る上で不可欠な弁別という作業の対象としての世界そのものを創出または形成する。
●認知システムは、観察するものを規定する時、規範的にも閉じたシステムである。
●脳は、自らを外界と遮断することによって、自身の組織を創出・再創出できる。
●弁別とは、背景からユニティーを際立たせるプロセスである。


例)森から木を際立たせる。

●人が暗示的にせよ明示的にせよ何かに言及する場合は常に、そこには「弁別の基準」が明確に存在している。
●弁別の基準を明確にするということは、そこに何等かの価値判断が働いていることを暗示している。
●価値判断:観察の対象に価値を割り当てること。
●価値判断はそれ自体がすでに弁別であり、それ自体基準を有している。
 例)木はぶかっこうではない、美しい。
●価値判断に関わる弁別と、もっと概念にかかわるようなカテゴリー化としての弁別とを分けて考える必要がある。

理由:知の具現化という考え方を採用しているがゆえに、知を記述する新しい言葉とは、弁別された諸要素の観察と自律的な価値判断の両面から、人と世界との連結構造の歴史的パターンを詳述できるものでなければならないから。

●知は弁別を行うことを可能にし、さらにその弁別が知(の展開)を可能にする。
●知は、新たな知と弁別の可能性にも言及する。
●「可能性に言及する」の捉え方

1. 過去の(言及された)知および弁別は、人が新しいものを認知する際の資源となる。
2. 過去の認知資源はイマジネーションも可能にしてくれる。

●認知過程とは過程そのものに言及すること:知とはそれがどんなものであれ結局は「自己知」である。


【個人知としての組織知】
●組織の機能とは、各組織メンバーがオートポイエーシスを実現できるように(認知プロセスを再産出できるように)連結構造を明確にしてあげることである。
●組織とはメンバーに規則性を与え、組織の一員として経験する事象に関して、ある事象とその発生のタイミングを彼らが他のそれと区別できるようにするものである。
●組織に関するメンバーの知は、少なくとも2つのより根源的な弁別に影響を受ける。


1. 「自分」と組織との弁別(自我と組織との弁別):オートポイエーシスは「アイデンティティー」の気づきにとって不可欠である。
2. 組織と環境の弁別:組織を取り巻く環境の中から組織の実際の活動領域を抽出し囲い込む。

●人は組織の境界を自分自身で創り出している。

理由:組織の境界とは知の問題であり、境界とは、組織の環境との弁別の基準と深く関わる。個々人の知によって生み出されるものであるから。

●個人の組織知という概念:様々な弁別を行うことによって、個々のメンバーにとっての組織というものが生み出される。


注:組織メンバーは他のメンバーの組織知を知ることは決してできない。

●タスク環境との連結構造が、タスク実行者の知識を観察者の知識と異なるものにしていると仮定すると、タスクを生み出したり、タスクの異変を感知したり修正したりするのに欠かせないタスク実行者の優れた弁別は、外部の観察者が観察する「範囲」を超越したものとなる。

範囲:外部の観察者が記述できない範囲

●組織とは、文書化されない暗黙のルーティンによって機能するものである。
●組織のマネジメントにとって重大な仕事は、かなりバラバラな見解の調整と統合ということになる。メンバーは、そうした調整によってはじめて、ルーティン的な行動をとるのに必要な安定性を確保できる。

(社会知としての組織知)

●2つの重要な問題提起

1. 組織の観察者としてのわれわれが提起しなくてはいけない方法論的問題
2. 知とはどこにあるのか

●コミュニケーションこそが、社会システムのオートポイエーシスのコンポーネント。
●あるコミュニケーションが意味を持つかどうかは、学問分野によって違ってくるし、各学問分野がどのようなルールを採用しているかにもよる。
●コミュニケーションは、それが科学という社会システムの一部になるためには、他の「科学者」に受け入れられる必要はない。
●科学というシステムは、科学的な探求と証明にかかわる世界を自らが生み出している。
●システムとしての科学は、(個人と同じように)観察を行ない、コミュニケーションをし、自らを理解するものだと言える。
●個人という分析ユニットが優先される場合、個人の知が世界を出来させ、社会システムというユニットが優先される場合には、社会システムの知が異なる世界を出来させる。
●組織と環境とを、および組織と個人とを弁別することが、とにもかくにも組織知によって可能になる。
●組織とは、オートポイエーシス的な存在であるが、加えてオートポイエーシスの階層レベルの問題を考慮に入れる必要がある。


閉じる

<第5章> スケーリング理論で(社会の組織知を)読み解く

社会的な知の展開を研究する手段であるスケーリングと自己相似性について解説している。

詳しく読む


【スケールを理解する】
●スケーリングは自然に根差した特性であり、自然界におけるあらゆるもの、あらゆる次元はスケーリングされうる。

【スケール横断的に相似であるスケーリング】
●スケーリングは相似ではあるが、スケール横断的に同一ではない。


例)イギリスの村の一つの庭に、その村をスケールダウンさせた模型村をつくる。その模型村の一つの庭に、模型村をスケールダウンさせた模型村をつくる。

カオス理論に関するノート


●初期状態における敏感さはカオス理論、すなわち自然の基本的な性質である。
●カオス理論は、完全性や決定性、一般性、歴史的必然性などに基づくあらゆる主張よりも魅力的であり、ゆえにポストモダンの科学や政治学の土台となるエレガントな理論的裏付けを提供している。
●カオス的なシステムでは、小さな変化が巨大な変化を引き起こすかもしれないし、大きな変化がまったく影響を及ぼさないこともある。システムは予測不能となる。

自己相似性の特性


●フラクタルの特性は「自己相似性」である。
●いかなるスケールにおいてもこの集合のどの部分も他の部分には似ていない。しかし、スケーリングを続けていくと(観察するスケールを変えても)いかなるセグメントにおいても、メインに合った新たな構造が、浮かび上がってくる。


組織とマネジメント研究における自己相似性に関する考察

●自己相似性は、いかなる業務にもつきものである。自己相似的現象あるいはプロセスによって何が扱われようと、その基本的な原理はスケール横断的に相似である。
●どこかの組織に入ると、無意識のうちに自己相似的な組織学習プロセスを展開することになる。徐々に、そのプロセスの統治原理(いかにして人々が異なる活動に従事しているのかとか、いかなるときにいかなる責任が生じるのか等)が明らかになってくる。それらは常に相似だが、決して同一ではない。
●組織は表向きのゴールや環境からの要求、しばしばリーダーの意図からも、多かれ少なかれかけ離れつつ、自ら活動を展開している。
●意思決定の合理的選択モデル(官僚モデル、政治モデルを含む)の組織における意思決定は、自己相似的であるといってよい。

●合理的選択モデルの意思決定方法

1. 合理的選択モデルでは、組織を特徴付ける首尾一貫した目標群があると仮定する。
2. 決定するために、いくつかの異なる代替案が考え出される。
3. 確立を計算しつつ、行為によって起こりそうな結果が評価される。
4. 目的に関して最も高い値を得るという社会的行為者の見込みを最大にする代替案を選択する。

【オートポイエーシスは、自己相似的でありうるか?】


●有機体は最小限の自律性しか有していないのに対して、人間社会には最大限の自律性があると推論する。
●社会的システムは、オートポイエーシス的に再産出される意味のシステムと定義される。
●観察者としての我々のタスクは、われわれがオートポイエーシスの専門用語を使用することができるスケール横断的パターンを認識することである。
●個人が(オートポイエーシス的に)新たな知識(新たな弁別)を産出する方法は、グループが(オートポイエーシス的に)新たな知識を産出する方法に似ており、グループが行っている方法はSBU(戦略的事業単位)が(オートポイエーシス的に)新たな知識を産出している方法と相似している。さらにはSBUが行っている方法は、組織が(オートポイエーシス的に)知識を産出している方法と相似している。逆もまた同様。
●個人またはグループ、組織は、自律的で、オープンであると同時にクローズドであり、自己言及的で観察可能なシステムである。
●われわれの自己相似的なオートポイエーシスの概念化は、コミュニケーションを通じて社会システムにまで拡張する。
●スケーリングと自己相似性は、社会的な知の展開を研究する手段である。


閉じる

<第6章> 組織知と言語化

組織知を社会化させる言語化が、組織においてどう扱われるのかが述べられている。

詳しく読む


【世界は言語によって生み出される】

●言語を組織知が社会化される手段とみなす。
●言語について話すために必要な2種類の弁別

1. 話し言葉は、ノイズなどに溢れた背景とは分けられなければならない。
2. 概念、動詞などのような言葉の諸要素に関する弁別がなされなければならない。

●時とともに、組織固有の言語領域が開発される。

1. 「組織」という言葉を導入することにより、われわれは言葉を通してそれと他のものとを区別するようになる(組織―環境の弁別)。したがって、実態すなわち組織は創出の言語化を前提としている。
2. 基本的弁別によって、組織という概念から他の言葉の弁別が可能になる。

●組織の伝統は、言語化のプロセスを通して構築される。
●組織の言語化には少なくとも二つの領域が存在する:文章・会話

【語の用法】
●語の用法は組織の言語化にとって欠かすことのできない特性の一つである。


1. マネジャーは自らのポリシーを名言する方法にこそイノベーションを起こなさなければならない。
2. ルールは、要領のよい行為を始めたり、更なる会話を始めたりするために必要な会話の時間を減少させるのに役立つ。
3. 言語ゲームは現在と過去のイベントを反映しているが、それは現時点において起こりうる未来についての会話をも構成する。

●意味創造に関して、語とルールの4つの可能な組み合わせがある。

●ジョークが新たな組織知に意味を与える。つまり、新たな弁別形成を切り開く。
●組織外部の観察者にとって、重要なタスクは語られた内容の意味を分析することである。観察スキームは以下の通り。

1. 組織的言語化のプロセスでそれらが使われたときにルールと語を同定すること。
2. 組織のプロセスでそれらが使われたときにルールと語を同定すること。
3. ルールや語を他の語やルールと比較すること、とりわけ他の組織で見られるそれと比較すること。

【組織における議論】


●ルールはルールを通して議論を推し進めるための特定の語や配列を区別する。
●何かを議論として提示することは、一組の特定のルールを使用していることを意味する。
●あらゆるスケールで、議論は4つの部分からなる:

1. 主張:何かと何か他のものを区別すること
2. 根拠:主張とは弁別されるが、主張を支持している
3. 論拠:根拠が主張を支持する道筋を示す
4. 限定:限界を示すことによって主張をさらに展開するか、水を差す

●主張は他のステートメントの根拠や制限になることから、組織の会話は更なる知の展開のための知的プールのようなものである。

【機能に関する議論】

●プロセス:

1. 組織の様々な機能を区別する
2. 実行される様々な機能に関連した主張をする
3. 組織―環境弁別を維持する

●機能に関する議論は、組織の機能について、つまりそれらの目的をも記述する。

時間に関する議論


●時間に関する議論:過去または未来について現在なされる議論であり、しばしばイデオロギー、基本的価値、または組織の規範についての会話を伴う。
●社会の組織知に一貫性を提供しているのは時間という会話の重要な要素である:自己言及性(オートポイエーシスの一つの重要な要素)が認められる。
●時間に関する議論は「理念化」を要件とする。

理念化:歴史的条件と特定の経験に言及する普遍化

価値に関する議論

●価値に関する議論は断定的であり、相対的な価値と、正と負の価値が区別される。
●価値に関する議論は、論者が言及するスケールに依存する、つまり観察状況に依存する。

複合的な議論


●いかなる会話においても、4つの異なる種類の議論は複合的に行われる。
●環境と区別する多種多様な議論を生み出すことにより、組織は次々に新たな意味合いの会話をもたらし、それによって新たな社会の組織知を生み出していく。

議論の自己相似性


●議論は常に様々なレベルで変化し続けるが、自己相似的な議論は本質的に、機能的あるいは時間的、複合的である。

自己言及的な言語化

●組織は自己知を持ち、自身の記述と行為が可能である自己言及的な知の体系として立ち現れる。
●疑いはそれ自身、疑いを晴らそうとして更なるディスカッションを導く。したがって、組織知のオートポイエーシス的なプロセスを促進するのに役立つ。

言語化の安定

●社会の組織知と言語化は、互いを安定的にすべく影響を及ぼしあっている。
●安定化によって時を越えて一貫性と整合性が維持される。
●社会の組織知は、議論が形成される際に論拠を伏せることによって議論を安定させる。

定義に関わる論拠


●会話においてルールに則った妥当な方法で語を使用すること、つまり確立されたルールに従うことによって、さらなる探求や質問がなされなくなる。

命題に関わる論拠


●組織のメンバーが効果的に話すためには、フォーマルな命題であれ原初的な命題であれ、それらについて他者が社会的に知っているということを個人的に知っているのと同様に、それらについて個人的に知っていることが重要である。

パラダイムに関わる論拠


●組織は少なくとも2つの条件下において学習したり、「パラダイムシフト」を企てたりする。


条件1:新しいマネジメントが入ってきて、古いパラダイムに疑問を投げかける。
条件2:組織が危機に直面したとき。

●組織のパラダイムというレベルにおける望ましい転換のマネジメントとは、規範を確立するという危険を冒しつつ、様々なスケールにおいて適切な会話を形成することにつきる。

反作用的な論拠の重要性

●反作用的な論拠は、議論に安定化をもたらす高度に洗練された戦略的要素を含む。
●観察者は通常明示化されないものに関しても疑問を呈するべきである。


閉じる

<第7章> 言語化とその先にあるもの

第6章で扱った言語化の結果として生じたテキストについて触れており、テキストの機能や扱いにくさについて説明されている。

詳しく読む



【テキストと社会の組織知】


●情報とは知の創出を可能にするプロセスの一つに過ぎず、テキストは個々の組織メンバーの認知プロセスへのインプットとなる。
●テキストは自らの自律性を獲得する。読むというプロセスがそのテキストの意味を決定してしまう。
●組織メンバーは、過去にあった会話の展開から想起できることに基づいて、ある特定の会話の展開を自ら予測する。
●自由記述:観察がよりシステマティックになされたり、様々なことを早期させたり、よりシンプルに表現できたり、さらに、観察と観察とがうまく結び付けられるように、構造や「テキスト」を固定すること
●組織のテキスト(ポリシー・マニュアル等)は、組織がシステマティックに自身を観察するのに手助けとなるような観察スキームを提供してくれる。
●テキストの意味は、テキストが読まれたりそれについて議論がなされたりするたびごとに、耐久力を備えて新たに生み出されていく。

【組織と環境】

●観察・言語化・テキストの産出の歴史は、その組織に固有の社会の組織知の展開をもたらす。
●組織は、それぞれの組織流に観察を行い、言語を使用し、そして事象について知る。そしてその結果、組織は首尾一貫した知のシステムとして持続可能な存在となる。
●各組織との関係は、価値・信用・構造・時間制という少なくとも4つの異なる次元に基づいて(自己言及的に)記述される。

1. 価値性:組織間の関係構築を可能にするような連結構造すべてにおいて、必ず価値が時間ベースで関係に割り当てられるようになる。組織の言語化とは、関係に価値を割り当てることによって、自らの行為や他の組織との相互調整の仕方に影響を与える。
2. 信用:関係は組織の複雑性のレベルを左右する。そして、信用はこの複雑性をコントロールする必要性を軽減してくれる。さらに、信用は関駅に固有の不確実性の程度に影響する。
3. 構造:「期待の構造」の記述は、組織間の諸関係の観察次第で変わるのが普通なので、組織はそうした言語化を安定させるための戦略的な妙技を持っていて、それを意のままに操る。
4. 時間性:組織間の諸関係を記述するものの一つとしてみなされ、記述に際して組織間の関係性を安定させる効果もある。

●記述とは、組織の言語化から生じるものであるがゆえに、4つの次元すべてにおいてかなりダイナミックなものであり、完全に固定化されることはまずない。


閉じる

<第8章> 組織知の展開の妨げになるもの

組織知にとっての障害をコミュニケーションの非作動、同意にとっての障壁、自己相違という3つの要因から述べている。

詳しく読む


【妨害の3要因】

●知の展開:自己相似的な方法で、また、すべてのスケールで、言語化によって組織にもたらされるオートポイエーシス的なプロセス。
●組織知の展開を妨げる3つの要因

1. コミュニケーションの非作動
2. 同意にとっての障壁
3. 自己相違


【コミュニケーションの非作動】

●組織において知が展開するためには、コミュニケーションが必要不可欠であるが、実際に生じるのはまれである理由

1. 人の認知はオートポイエーシス的すなわち自律的なものであるので、他の人が意味するところを理解するということがごく自然な営みであると考えてはいけない。
2. コミュニケーションすなわち知の展開には、時間や空間、各グループに適用されるコミュニケーション・ルールに束縛される。
3. コミュニケーションや知識が理解されたとしても、受容者がそれに同意するとは限らない。

【同意にとっての障壁】

●組織知の展開を妨げるものと同様、同意にとっての障壁も3つに分ける。

1. フォーマルな手続きやフォーマルに受け入れられている理屈:実施手続き、お役所的な事務処理、会計原則、情報システム、組織のルーティン等
2. 組織における原初的理論の類:神話、物語、金言、伝説、座右の銘
3. あらゆるものを適切な場所に収める作用のある組織のパラダイムや世界観:パラダイム、業界での「成功のカギ」という常識

【自己相違】

●オートポイエーシス・プロセスはスケールを横断して相似である。
●知の展開のプロセスがスケールを横断して相違であるならば、それを自己相違と名付けるが、その場合組織知の展開は妨げられている。
●本章で論じられた問題点3点

1. 会話に話題自体が持ち込まれる
2. 組織の言語化を妨げる
3. 理解はしているが同意を妨げる


閉じる

<第9章> オーガニゼーショナル・エピステモロジーの未来

今後の組織知の研究においては、組織の境界、組織のアイデンティティー、組織の自己言及、組織の言語化、これらをすべてのスケールで理解するべきだと述べられている。

詳しく読む



【方法論】


●ロジックとエピステモロジーは方法論に関して枝分かれした2つの小枝のようなものである。
●オーガニゼーショナル・エピステモロジーは、オートポイエーシス理論、知の具現化、スケーリングに基づいている。
●この本の読者にとってこの文章は、読者のオートポイエーシス・プロセスに対して蒔かれる不安の種である。

【組織知を研究するに際して】

●組織知は簡単にとらえることができない。
理由:知は世界を生み出すものであり、世界は知によって生み出されるものであるから。
●組織知を理解するには、組織の境界、組織のアイデンティティー、組織の自己言及、組織の言語化、これらをすべてのスケールで理解することによって可能になる。

【組織の閉鎖性について】

●あなたが自分自身で自己構築した科学的な方法論でもって観察を行い、あなたが自分自身で自己産出した理論でもってこうした観察を記述するとすれば、その場合あなたはそれがどのようなスケールであろうとオートポイエーシスのいう自己言及を逃れ得ない。


閉じる

<第10章> 新しいエピステモロジーの事例:センコープ社のマネジメント・モデル

本書で扱った内容がセンコープ社という具体的な事例をもとにして説明されており、本書の内容が実践的な組織に即していることを示している。

詳しく読む


【マネジメント・モデルおよび理論に共通するテーマ】

●マネジメント・モデルを組織のヒューリスティック(発見的教授法)と考え、マネジャーが実際に何かを見た時にそれを認識できるようにするといった実体的な性質や特徴を有している。
●マネジメントに関する諸理論は人間の性質の描き方において様々である。

精神と肉体との弁別

●精神と肉体との弁別を行った上で、これまでのモデルおよび理論は焦点を当てるべきものとして「肉体」の方を選択してきたが、そのモデルは組織における知の展開を刺激したり方向付けしたりすることへはうまく導いてくれない。

知の展開のプロセス

●知の内容にのみ焦点を当てると厳しい限界に直面することになる。

理由:人間の知というものは、ある時は会話を、またある時は観察を通じて、この瞬間
瞬間で絶えず変化し続けているから。

●知の内容をベースとするモデルに依拠するマネジャーは2種類の問題に直面する。

1. 彼らがある従業員の知の展開の軌跡を追うことは事実上不可能である。
2. 彼らが能力を理解しようとするならば、ある従業員の実際の知に関してあまりにも無知になってしまうという危険を冒すことになる。

●センコープ社は知の内容だけでなく知の展開のプロセスに照準を合わせる。
●人間の性質をモデル化しうるようなマネジメント・モデルに必要な2つの要件

1. そうしたモデルは知の展開のプロセスを考慮したものでなければならない。
2. 肉体と精神は異なるものとしながらも、相互に作用し合うものと認めるようなモデルでなければならない。

【センコープ社のマネジメント・モデルとその展開】


●われわれはビジネスにおいて化学やテクノロジーからの知を利用し、それを消費しうる何ものか(商品やサービス)に転換する。最後に、知は金銭と引き換えに市場で消費(使用)される。
●ビジネスとは新しい知を商品やサービスに転換するというユニークな役割を担っている。

マネジメントの責務

●ビジネスのマネジメントのための3つの明確な責務

1. 知を展開して意思決定のためのオプションを開発すること(未知のものの方への移動)
2. オプションのうちどれを実施するかについて決定すること
3. 選択したオプションを実施すること(既知のものの方への移動)

●ビジネスのマネジメントにかかわるすべての活動:考えること(B)、決定すること(A)、実施すること(C)

●BはAのために新たな知を展開し新たなオプションを開発する
●CはAによってなされた決定を実施するとともに、できるだけ効率的に作業を管理する。

根本的な違い


●Bは始まりと終わりが明確な各プロジェクトのネットワークとして管理される。
●Cは、スムーズに行われているオペレーションをルーティン化することによって管理される。
●Bは組織の今後のさらなる成長と関係するもの。Cは目下の存続と関係するもの。
●意思決定者と呼びうる者はすべて組織において2つのタイプの関係を管理する。

1. とりわけ知の展開と情報の自由な流れを実現するためにデザインされた関係
2. 同意されたルーティンを実行するためにデザインされた関係

プロジェクト・マネジメントvsオペレーション・マネジメント

●プロジェクト・マネジメントで必要とされる3点

1. 目的を設定する。
2. 始点と終点を明確に定める。
3. 情報の展開および構築にあたっては、次のステージである意思決定のための情報なり知になるよう方向を定める。

センコープ社のマネジメント・モデルの持つフラクタル性


●包括的なマネジメント・モデルとは、関連するすべてのスケールを包摂していなければならない。
●組織の機能を記述するのに線形な方法などなく、組織はスケールによって記述されるしかない。

組織構造に関する新しい見方

●組織とは、総じて言えば、時と場所を選ばず起こる変化を手なずけるようなマネジメント原則とか共有の知識ベースによって導かれる

【センコープ・モデルから得られるもの】

●センコープ社のマネジメント・モデルによって提起される問題を明らかにする。

1.新たなマネジメント・モデルはなぜ必要なのか?
●今日のマネジメント・モデルの実情は、ビジネス組織を適切に導いたり、複雑な組織の諸関係が今後どうなるかを洞察するものとはなり得ない。
●新たなマネジメント・モデルとは、個人と組織との関係性および組織と環境との関係性を記述するものでなくてはならない。
●新たなマネジメント・モデルに必須な3つのベース

1. 人間の組織に関して新しい科学やテクノロジーを駆使して理解すること
2. それに関してパースペクティブを援用して理解すること
3. これら2者間の相互作用について理解すること

2.もっと現実を見据えたマネジメント・モデルはどうすれば開発できるのか?

●自分自身を管理するのに使われるモデルと組織を管理するのに使われるモデルが同じであれば、現実を見据えたモデルということができる。

3.斬新で現実を見据えたマネジメント・モデルをどうすれば記述できるのか?
●知のベースをスケール横断的に展開する組織の能力があってはじめて実現する。

4.新たなマネジメント・モデルの構築へ向けて将来的に取り組まなければならないこととは一体どんなことか?
●意思決定のための知を展開できるよう外部からデータを取り込んだり、組織内で情報を作り上げたり、情報をふるいにかけたりするプロセスを備える必要がある。


閉じる

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする